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幻の遊園地 [雑感]

「風早園で売ってた土産物辺りが手に入る
 といいんだろうけどなあ。絵はがきとか
 妖精の城の置物とか、壁に飾る三角の旗
 とかあったんだけどねえ。
 あの辺は、街の骨董屋に出てきても、
 ネットオークションに出品されても、
 あっという間に売れたり落札されてしま
 うから、ゲットは難しいわなあ」

「人気商品なんですね」

店長はうんうんと頷いていいました。

「あの遊園地に、大事な思い出がある人間
 が、それだけたくさんいるってこと
 だろうな」

ふう、と哲也がため息をつくと、店長は
その肩を軽く叩き、笑っていいました。

「コンビニたそがれ堂に行けばあるかも
 しれないな。うん、あそこならきっと
 あるだろう」

「--たそがれ堂?」


村山早紀「コンビニたそがれ堂」
”神無月のころ” 幻の遊園地より



父が永眠し、一年が過ぎた。

コロナウィルスのおかげで、実家の神戸に
帰省できず、一周忌にも顔を出せなかった。
現在、仕事も自宅待機中で時間だけはある
ので、せっかくだからこのブログに思い出
を書くことで、亡き父を偲ぼうと思う。

父は愛情表現が苦手な人だった。

母が過保護・過干渉の毒親系だったのに対
し、何事にも一切、口出ししなかった。
「グリーン グリーン」の歌詞のように
この世に生きる喜び そして悲しみのことを
語り合うこともなかったし、かと言って
人生の大切な事を背中で語るタイプでも
なかったが、その分、物を買い与えて愛情
を満たしているようなところがあった。

自分が子供時代に複雑な環境で寂しい思い
や不自由をしてきた分、息子や娘には
人並み以上に幸せになってもらいたいと
いう気持ちが強かったのかもしれないが、
接し方がよくわからなかったのだろう。

酒も飲まず、社交的でもなかったが、
外出するのは好きで、小さい時からよく
2人で近所を散歩したり、自転車で
ちょっと遠出したり、家族で旅行したり、
色んなところへ連れて行ってくれた。


今から40年ほど前の私の子供時代、
兵庫県民にとって遊園地と言えば
「宝塚ファミリーランド」と
「甲子園阪神パーク」が
定番の2強だった。

阪神パークは小学校の頃、毎年、夏休みに
友達や従兄弟を連れてプールに行くのが
我が家の行事だった。

宝塚ファミリーランドは、まだ幼稚園に
入る前だったか、恐竜の催し物があって、
動いたり鳴いたりする大きな恐竜たちの
展示物が怖くて、泣きわめいていた記憶が
、うっすら残っている。

阪神パークもファミリーランドも、今は
もうない。
私や、かつて訪れた人々の心の中にのみ
存在する「幻の遊園地」になってしまった

今にして思えば、当時は週休2日なんて
なくて休みは日曜だけなのに、唯一の休日
にさほど身体が頑丈でもない父が、家族や
私を色んなところに連れて行ってくれたと
いうのは、不器用な父の愛情だったのだと
あらためて思った。

晩婚で、ようやく出来た最初の子供という
ことで、3つ下の妹よりもだいぶん甘やか
された。末は博士か大臣か、と期待もして
いたのだろうが、全く応えられなかった
どころか、親孝行らしいこともほとんど
出来ないまま、父は旅立ってしまった。
あの頃の事を少しは覚えていてくれてた
だろうか。

残った母には、生きてるうちに、感謝を
形であらわせるように心掛けたい。

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当時の恐竜博のパンフレット

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結構、本格的です

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1972年!実は全く同じものをもっている
のですが、当時の幼かったワタクシめが
ボロボロにしてしまっていて、しかも
どこにあるのかわからないので、数年前
ヤフオクにて入手しました。
特筆すべきは保存状態の良さ!
しかも当時の入場券の半券まで一緒に
入っていたという。
今回、タイトルを拝借させていただいた、
たそがれ堂の作中の内容を実体験!

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阪神パークといえば「レオポン」
こちらもヤフオクで入手。

せっかくタイトルを「幻の遊園地」に
したのに、遊園地のことはほとんど
書かず、中途半端な記事になってしま
った・・・
「幻の遊園地」は、コンビニたそがれ堂
通算5冊目にあたる「神無月のころ」の
中の一遍です。
同じ団地に住む、おばあさんの遠い日の
約束と罪滅ぼしの為に、風早の街の
コンビニの店員の青年が、商売ガタキ
(?)である、たそがれ堂へと迷い込み
、その昔、存在した遊園地、風早園の
「有効」なチケットを手に入れます。
かつて子供の頃、その遊園地で果たす
はずの約束が叶わぬまま年を重ねた
おばあさんは、青年から今はもう存在
しないあの風早園のチケットをもらった
その夜…

機会があれば、ぜひご一読を。


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感謝と尊敬を込めて
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カエルの歌が… [イロドリ写真館]

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現在、果てしなく長い自宅謹慎…じゃなくて
自宅待機の真っ只中で、腐るほど時間が
あるのに何も出来ない。
カネも無いし、車も変な音がして故障の
一歩手前だし、肩や肘も痛い。
何かこのままだと病気になってしまいそう
だが、世の中にはもっと深刻な状況の人が
沢山いることを思うと、せめて気持ち
ぐらいはしっかりとしなければ、と思う。

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ウィルスで炙り出される醜い人間模様など
素知らぬ顔で季節は確実に移ってゆく。
春から初夏へ
ウチの目の前の田んぼも、田植えが始まり
カエルの声が聞こえるようになった。

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行事やイベントが次々と中止に追い込まれ
世の中が殺伐になっても、自然の美しさと
ささやかな思いやりを忘れないように
生きたいと思う。

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2020年の挑戦 [雑感]

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2020年はケムールイヤーになるはずだった…

…はぁ?
ただでさえコロナで皆イライラしてるのに
わけわからんこと言ってんじゃねー
このハゲー!

あ、いやいや、まあちょっと聞いてくれ。
「2020年の挑戦」
という言葉で何を連想しますか?
オリンピック?
いえ、「2020年の挑戦」といえば

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これですわ

「2020年の挑戦」(何回言うとんねん)
これは日本特撮史上…いや、日本のドラマ
全般の中でも燦然と輝く珠玉の名作
「ウルトラQ」の第19話のタイトルなので
あります。

人間が突如、次々と消えてゆく怪事件。
それは500歳という肉体の老化に
耐えられなくなったケムール星の
ケムール人が地球人の肉体を強奪すべく
計画した誘拐作戦なのであった。

主人公・万城目淳たちの活躍でケムール人
は倒され、誘拐されていた人々も無事に
戻って来てめでたしめでたし・・・
と、思いきや!
最後の最後におよそ子供番組とは思えない
ブラックユーモアなラストが(笑)

ウルトラQは今から54年前の1966年に放映
された特撮ドラマですが、まさに
「原点にして頂点」の言葉に相応しい奇跡
の作品です。
30分に凝縮された深いストーリーも
もちろんですが、登場した怪獣や宇宙人の
デザインがもう、神がかってるとしか
言いようのない秀逸さですよね。
カネゴン、ガラモン、ぺギラ・・・
不世出のデザイナー成田亨 氏が生み出した
愛すべきモンスターは、半世紀を越えた
現在も多くの人を魅了してやみません。
Wiki情報によれば、このケムール人は
特に成田氏のお気に入りとか。

・・・で、何が言いたいかというと
ホントだったら今年は東京オリンピックの
熱狂とともに、この2020年の挑戦も再び
脚光を浴び、日本の文化は萌えアニメや
ロリコンのエロ漫画だけじゃなく、世界に
誇れるデザイン、造形があるのだ!と評価
されるはずだったのに~…という、願望と
いうか妄想です。

しかし、現実はオリンピックは延期となり
ケムール人よりタチの悪いウィルスと、
それによって炙り出された愚かな人間の
自己チューな醜い行動によって、世界が
危機を迎えて、違う意味で2020年の挑戦に
なってしまいました。

沢山の人の命が失われ、ほとんど全ての
イベントは中止、延期になり、世界中が
いまだ先の見えない現状にパニックに
陥っている状態です。

限界を越えて最前線で戦って下さってる
方々に感謝を忘れず、せめて足手まといや
邪魔にならないよう、心掛けて生活したい
と思います。


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いつもと違う春が去り [イロドリ写真館]

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まずは、ちょっとアートまがいの
謎の美少女猫のグラビア(笑)から

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今年は例年より肌寒く、雨風が酷い日も
多かったので、あっと言う間に春が終わって
しまった感じですね。

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当ブログにちょくちょく出て来る
イロドリお気に入りの白木蓮も
やはり、春の到来を告げ、他所よりも
早く散ってしまいました。

しかし、今年は天気が悪かったとか
寒かったという以前に、コロナにより
あらゆる催し物が中止に追い込まれ
せっかく待ち望んだ春だというのに
ほとんど喜びがない、辛い日々に
なってしまいました。

そんな中、医療関係者の皆様や有効な
対策を研究・開発して下さってる方々、
そのほかにも、危険な目に遭うリスクを
背負いながら働いて下さってる方々には
本当に感謝の思いしかありません。
こういった方々の余計な手間を増やさ
ないよう気をつけてゆきたいです。

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今日、5月2日はhideさんの二十三回忌
ですね。亡くなってからファンになった
ニワカではありますが、もし彼が今も
元気なら、どうやって世の中を元気に
しただろうか、とふと思ったりします。

皆様もどうぞ、くれぐれもお気をつけて

イロドリウサギ&ニャアコ
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チェストーーーーッ!名著 !?「大山倍達とは何か?」 [オススメ]

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本日、4月26日は、極真空手創始者であり
ゴッドハンドの異名を持つ「大山倍達」
総裁(1923~1994)の御命日ということで、
今から25年前、総裁が亡くなられた翌年に
購入した「大山倍達とは何か?」という
一冊をご紹介したいと思います。

え!? 大山総裁とか慣れ慣れしく言ってるけど
ひょっとしてイロドリって極真経験者?
と思われるかもしれませんが、全然そんな
ことはなくて、極真空手はおろか格闘技は
もとより何のスポーツもやってこなかった
ひ弱なおっさんでしかありません。
しかし、そんな ひ弱なおっさんですら、
読んだ後には畏敬の念を込めて「大山総裁」
と呼びたくなってしまうのが、この
「大山倍達とは何か?」という一冊なのです。

内容は、近しい関係者11人へのインタビュー
と、漫画「空手バカ一代」の主人公としての
大山倍達が繰り広げた虚々実々の名場面十選
がメインとなってます。
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このインタビューの顔ぶれが凄い!

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奥様の智弥子夫人は馴れ初めから新婚生活、
若い頃のお二人の生活の様子など。
大山総裁もかなりムチャクチャですが、
奥様の楽天家ぶりと天然ぶりはまさに
女・ゴッドハンド(笑)

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最近すっかり見なくなってしまった石井館長
自らの師であり、極真空手きっての天才
「ケンカ十段」で知られる芦原英幸 氏の
思い出話や、Kー1を通して格闘技を一般の
お茶の間に広めた思惑や経緯など。

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そして、後継者・松井章圭館長・・・

他にも草創期から総裁と共に極真空手を築き
上げてきた郷田・盧山 両師範の、当時の
貴重な話や、添野義二 士道館館長が総裁に
「息子」とまで呼ばれ、頼られていながら
極真を出て行かざるをえなかった事情など、
部外者が読んでも当時の光景が思い浮かぶ
ような深いインタビューが、時に笑いを交え
ながらつづいてゆきます。

個人的に一番ツボだったのは
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漫画「空手バカ一代」の「アメリカ遠征編」
で、実名で登場する遠藤幸吉 氏
劇中ではアメリカで強制された八百長の
タッグマッチを破棄して相手を途中でノシて
しまった為に、試合後ピストルを持った
ギャングに囲まれた際、突破するのに動きが
鈍い遠藤氏が足手まといになるから(笑)と、
手刀で眠らせて、その間にマス・大山が一人
でギャングたちを蹴散らしてしまうという、
とんだ噛ませ犬役!
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これを当時の検証としてご本人に見てもらう
という!(笑)
当然!?アメリカ遠征編の内容は全否定で(笑)

まあ、21世紀もすでに20年になろうかという
このご時世に「空手バカ一代」で描かれた
内容が事実だと信じてる人もいないでしょう
けど、更にこの後、1954年の「オール讀物」
という雑誌の記事の完全収録企画があって、
力道山との対談(これだけでも凄いけど)の中
で、有名な「牛殺し」について総裁自身が
「(牛は何度殴っても死なないから諦めた)
 だから、私が牛を殺すというのはウソです
 よ。万一、牛を殺せる人があったら会って
 みたいです。」
と、妙に説得力のある解説つきで否定してる
箇所があって、もうどこまでが事実でどこ
までがファンタジーなのかわからなくなって
くるというね(笑)

でも、大山総裁と極真草創期の方々が生きた
昭和の時代というのは、殺伐としつつも、
どこかおおらかなんだったんだなあと、少し
羨ましくなりました。

この本が発売されたのは1995年2月。
総裁が亡くなられてまだ1年も経っていない
頃で、この時はまさか、この極真空手が
分裂に次ぐ分裂を繰り返し、遺族や後継者が
骨肉の争いを繰り広げるなんて、夢にも
思わなかったので、あらためてカリスマ
創設者亡き後の組織の運営の難しさを実感
した記憶があります。

ぜひ、機会がありましたら読んでみて下さい
ませ。






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もうひとつの「生きる」 [オススメ]

「君は若い…健康で…どうして君はそんなに…
 そんなに君は活気があるんだ。私はそれが
 羨ましい。私は死ぬまでで…たった一度で
 いい、君のように生きて死にたい。
 私にはすることがある。私にはしなければ
 ならないことがあるんだ。
 だが…それが私にはわからない。
 君は知ってる。
 いや…知らんだろうが、君は知ってる。
 現に君は・・・」

「私は別に・・・」

「教えてくれ、どうしたら君のように
 生きられるのか」

「だって…ただ働いて、食べて…」

「それから!?」

「それだけよ」

「へ!?」

「ホントよ。だって私、毎日こんなもの
 (子犬のおもちゃ)を作ってるだけよ
 昔からのおもちゃみたい…懐かしい…」

ネジを巻くとテーブルの上でキャンキャンと
鳴きながら歩く子犬のおもちゃ

「こんなものでもね…作ってると楽しいよ。
 私、コレ作りだしてから、日本中の
 赤ちゃんと仲良しになったような気が
 するの。課長さんも何か作ってみたら?」

「あんな役所で一体何が出来・・・」

「そっか、あそこじゃ無理か・・・
 じゃ、あんなとこ辞めてどっか別の…」

「もう遅いよ」

一瞬の沈黙の後、自分の中で何かに気づく男
その姿を不思議そうに見る若い女性

「?」

「えへへへへへ」

「?」

突然、気が狂ったかのように笑う男の姿に
一瞬たじろぐ若い女性

「まだ遅くはない、無理じゃない!
 あそこでもやれば出来る!
 そうだ、やる気出せ、やる気を出せ!」

「・・・?」

呆気にとられる若い女性

「ああ、君コレ私にひとつ・・・」

女性が工場で作っていた子犬のおもちゃを
もらい、小脇に抱えて足早に立ち去る男

「私にも何か出来る…私にも何か…」


ドラマ版「生きる」より



いきなり長々と書いてしまいましたが、
今回は松本幸四郎さんが主演したドラマ、
「生きる」のネタばれ感想をお送りします。

ネタばれ…と言っても、オリジナルの
「生きる」はあまりにも有名な映画で、
世界のクロサワ、黒澤明 監督の代表作の
ひとつに数えられる不朽の名作なので
内容もラストもご存知の方が多いでしょう
から、ここでは大まかな紹介と私の好きな
場面を書いていきたいと思います。

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重厚なモノクロの画面と、何を喋ってるのか
聞き取りにくい志村喬さんの鬼気迫る名演が
印象的なオリジナルは「いかにも昭和」って
感じの舞台でしたが、リメイクされた本作は
画面もノリも、明るく軽い平成らしい雰囲気
でした。

妻に早くに死なれてから、男手ひとつで
育ててきた息子とその嫁からも邪険に扱われ
、何の楽しみもなく、来る日も来る日も
市役所で、文字通り「判で押したような」
仕事を続ける、生きる屍のような課長が
癌で余命わずかな現実を知らされて、一念
発起し、かねてからの住民の願いだった
公園の建設に、残された2ヶ月足らずの
人生をかける話。

映画版を最初に観たのは、まだ二十歳の時
で、何かの機会に強制的に見させられた
ということもあり、その暗さと、重さと、
志村喬さんの惨めな中年オヤジの熱演ぶり
に、気分がドーっとなって、感動よりも
「何ちゅうもん見させるんだ!」
という不快感のほうが強かったです。
しかし、それから10年近く経ち、いろいろ
と失敗や挫折だらけの人生で、私自身が
生ける屍へと落ちぶれてから、あらためて
何かの拍子でこの作品ともう一度出会った
時、涙なくしては観ることが出来ません
でした。
今では人生ベスト10に入る大切な映画です

…で、ちょっと前にTSUTAYAで見かけて
気になってたドラマ版を、この前やっと
借りてきたのですが、何ともう13年も前の
作品なんですねえ。

癌で余命を知って絶望する主人公が関わる
人物2人は
深キョン、深田恭子さんと、
我らが猫侍、北村一輝さん
深キョンはあまり演技が上手いようには
見えなかったんですが(ヲイ!)可愛らしく
て不思議な存在感がありました。
そして北村さんの濃いい顔は登場しただけ
で笑ってしまう!
娯楽や付き合いに無縁だった主人公を
華やかな夜の世界へ連れ回す彼の役は
映画版ではあっさりフェードアウトだった
けど、ドラマでは真面目一筋の主人公に
亡くなった自分の父親の姿を重ね合わせる
セリフがあったり、別れ際にあげた派手な
マフラーを、幸四郎さん演じる主人公が
亡くなる時まで着けてるという、若干
人情味のある演出でした。

さて、オリジナルの映画「生きる」と
聞いて、ほとんどの人は志村喬さんが
ブランコに揺られながら「ゴンドラの唄」
を歌うシーンを思い浮かべるでしょう。
確かに日本映画史上に残る名場面である
ことは異論の余地のない事実ですが、
ワタクシ個人的には、主人公が料亭か
どっかで、かつての市役所の部下で
今では玩具工場の流れ作業の仕事をして
る若い女性と話をするシーンが一番
好きなのです。

市役所に勤めていた頃とは違い、溌剌と
輝いて見える彼女に、なぜそんなに
生き生きとして過ごせるのかと尋ね、
主人公が残された生きがいを見つける
きっかけとなる大事な場面なんですが、
最初、何の関係もない女学生たちが
担任の女性教師の誕生会の打ち合わせを
してる様子を同じ画面の端で延々と映し
てるんですよ。
で、この子たち、主人公とこのあと
接点を持つんかなと思って見てると
別にそうでもない。
で、主人公が部下だった女性との会話の
中で、自分が成すべき事を悟る瞬間に
誕生会の主役の女性教師が到着して
女学生たちがハッピーバースデーの歌で
迎えるんですが、それがちょうど
死んだように生きてきた男が、生きる
意味を見出した、新しい誕生の瞬間を
祝福するように聞こえてくるという。
もうね、泣けて泣けて仕方なかったです。

結局、主人公とこの女学生グループは
最後まで全く関係なかったのですが(笑)、
ひとつの画面の中で、同じ空間で、
同時進行だった全く関係ないシーンが
ここまで見事にハマる演出を見て、
やっぱり世界のクロサワだ!と感動した
ものです。

ドラマ版ではこのシーンは平成らしく
高級レストランっぽい場所で、幸四郎
さんが使命に目覚め、店を飛び出て
いった後、女学生ではなく、客の女性
グループが入れ違いで遅れてきた友人
にハッピーバースデーを歌う演出でし
た。ちなみにこの記事の冒頭の長い
セリフはこのシーンの幸四郎さんと
深キョンの会話です。

そしてドラマ版も映画と同じように
失踪していた主人公が市役所に復帰し
、それまで他の課へたらい回しにして
いた公園の実現へ向けて、燃えて出発
する!
…というシーンの直後に幸四郎さんの
遺影が映って、50日後に亡くなった
というナレーションとともに、有名な
お通夜の場面へ。

実際に50日間、いかに主人公が公園
建設の為に奔走したのかを映すのでは
なく、お通夜の席での同僚たちの
目撃談として、残された命を振り絞る
姿が再現される演出も、初めて見た
時は斬新だなあと感動しました。

通夜の場で課長の最後の日々に感銘を
受け、俺たちもやるぞ!と決意した
ものの、数日経てばまたすぐに
やる気のない日々へと戻る同僚たち。
そんな中、亡き課長が命をかけて
住民の願いに応えて作った公園で
かつての上司を偲ぶ若い部下の役を
ユースケ・サンタマリアさんが、
イイ味だして演じてました。



今、自分が好きな事、生きがいに夢中に
なれる人は本当に幸福だと思います。
しかし、私を含め、せっかくの人生を
無駄に過ごしてしまってる人間は、この
課長のように死期を悟りでもしない限り
本気で「生きる」ことは出来ないの
でしょう。
でも、この課長のように、たとえ僅かに
残された人生でも、自らが生きる意味を
見出し、新しく生まれ変わった瞬間に、
どこからともなくハッピーバースデーが
聞こえてきたように、いつでも神様…
だかお天道様だかご先祖様かはわからない
けど、そんな存在が見守ってくれてる
感じがするのです。

人類史上、稀に見るコロナ禍の厄災で
明日が必ずあると言えない現在。
今日の命のありがたみを忘れそうな時
もう一度観たい作品です。






 


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これは本当に現実の出来事なんだろうか [雑感]

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2020年が始まって四分の一が過ぎた。
今年は本来なら東京オリンピックの年になる
はずで、期待と喜びの年明けだったはずが…

まさか世界中がこんな大変な状況になろう
とは、誰も想像出来なかっただろう。

そして昨日、志村けん さんが亡くなった。
信じられない。
何だかもう、どこまでが夢で、どこまでが
現実の日常なのかわからなくなる。

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せめて、このブログを見に来て下さる皆様が
守られますように、厄災よけとして水木先生
のアマビエの絵を載せておきます。

でも、神頼みのその前に・・・
自分自身も、そして周囲の人達も大切にする
為に、出来る努力はお互い頑張りましょうね
。そしてお互いを労わりあって、この
未曽有の脅威を乗り越えましょう。


イロドリウサギ&ニャアコ
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ネタばれ注意「おもちゃ絵 芳藤」 [オススメ]

後悔だらけの人生だ。臆病のせいで、
目の前にあった色んなきらめきを悉く
掴み損ねている。
傍から見れば馬鹿げた人生だと笑われる
ことだろう。
けれど。
あたしの人生は空っぽだったかもしれない。
それでもあたしの筆先にはすべてが
詰まってるんだねえ。
だから、絵師は止められないんだねえ……。

「おもちゃ絵 芳藤」三章より

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浮世絵師・歌川国芳

田舎住まいで情報に疎い私でも、ここ数年の
全国各地の美術館などで行われてる様々な
「国芳展」の情報や写真はかなり耳目にして
おりました。行けんかったけど…w
関心のない方も、こういう写真を一度は
見かけたことがあるのではないでしょうか。
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今回ご紹介する、谷津矢車さん著
「おもちゃ絵 芳藤」は、その歌川国芳の
弟子である、歌川芳藤が主人公の物語です。

これはねえ、ワタクシ的にはかなり面白
かったですねえ~
もともと永谷園のお茶漬けのオマケの
カードで安藤広重や葛飾北斎なんかに
慣れ親しんで育った世代なので、こうした
江戸時代の浮世絵や風景画には勝手に
親近感を抱いてたので、3年前に図書館で
この表紙を見た時はソッコーで借りちゃい
ました。

物語は、師匠であり天才浮世絵師だった
歌川国芳が亡くなった朝の場面から
始まります(笑)
師・国芳の葬儀の段取り、そして数多くの
弟子たちが才能を開花させ巣立っていった
画塾「国芳塾」を、師匠亡き後どうするの
かに悩む主人公・芳藤
この話を皮切りに第一章は主な登場人物の
紹介を兼ねて、いくつか事件が起こります。

弟弟子の芳年と幾次郎、兄弟子の芳艶、
元・兄弟子の河鍋狂斎(後の暁斎)、
師匠の娘であり、今はそれぞれ嫁いでいる
お鳥とお吉
全員、後の世にその名と作品を残す実在の
人物が活き活きと描かれております。
一文字違いの似たような名前で最初は混乱
するかも知れませんが、それぞれキャラが
はっきりと描きわけられてるので、すぐに
馴染みます。
この、兄弟弟子とか師匠との関係って
落語の世界にも似てますよね。
思わず高校時代に貪るように何度も
読み返した、三遊亭圓丈師匠の
「御乱心」を思い出しちゃいました。
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続く第二章も幕末から明治へと移りゆく
激動の時代の中で様々な出来事が起こるの
ですが、こちらは多くの別れがあり、
妻との死別、弟弟子との決裂、「国芳塾」
の閉鎖を経て芳藤は世の中からも周囲から
も取り残されます。

実はこの芳藤、およそ主人公とは思えない
ほどグダグダな性格に描かれてるんですよ
今で言うところの「自己肯定感が低い」
ってやつですかね(笑)
自分の才能を信じきれないが為に、いつも
あと一歩が踏み出せず、あと一言が言い
出せず、せっかくの大きなチャンスを
弟弟子に奪われようが、親子ほど年の
離れた新鋭の絵師にコケにされようが、
肚の中では”ムカっ”ときながらも
「自分はこんなんだから仕方ない」って
結局、納得しちゃうんです。

もともと「おもちゃ絵」というのは
子供が切り抜いて貼り付けて遊んだりする
、文字通り、玩具としての浮世絵で、
役者絵や風景画と比べると、当時は、やや
下に見られる扱いだったみたいですね。
他の弟子達が大胆な浮世絵でブレイクして
ゆくなか、いつまで経っても子供相手の
「おもちゃ絵」を生業としていることが
芳藤の自虐的な性格の一因にもなっている
ようです。
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実際の芳藤が遺した「おもちゃ絵」


そんな性格だから新聞社に就職した幾次郎
からの安定した職の誘いも断り、昔から
ほのかに思いを寄せ合っていて、同じく
伴侶に先立たれた、国芳の次女・お吉との
再婚の道も自ら断ってしまうのです。
もうこの芳藤のウジウジぶり、中途半端な
”いい人”ぶりがワタクシ的にはシンクロ率
1000%の感情移入!
…ただし決定的に違うのは本当は才能が
ある、というのと、イイ女にモテるという
ところが私とは正反対なのですが ( *´艸`)

こうして自身の不器用な生き方を受け入れ
全てを失った芳藤ですが、意外な救世主が
現れて彼を「おもちゃ絵師・歌川芳藤」と
して覚醒させるべく導いてゆくのです。

その意外な救世主とは!

何と!何と!

名もなき「黒猫」だったのでありました~
(ΦωΦ) なーん、

最後の第三章はこの黒猫が、時には
励まし、時には諭すかのように
「なーん、」と鳴きながら孤独な芳藤に
寄り添います。
いや~全国のクロネコJAPANの同志の
皆さん、萌える展開ですね~
これだけでも読む価値があるってもん
ですぜ。

特に極めつけはラスト近くのこの場面

気分転換にフラリと散歩に出た芳藤が
いつの間にか先回りしていた黒猫に
誘われるように細い路地裏を四苦八苦
しながら通り抜けた先に、今まで見た
ことがない版元の店先に辿りつく。
そこでその版元の店主に10年前に
自分が描いた絵をベタ褒めされただけ
でなく、来る客、来る客が皆、自分の
絵を幸せそうな顔で買って帰る姿を
目の当たりにし、自分が描いてきた
ものが、自分がやってきたことが、
間違っていなかったと実感するのです。
…って「コンビニたそがれ堂」かよw

おそらくこれは芳藤に、自分の絵に
対する本当の思いをわからせる為に、
黒猫が見せた幻なんでしょうけども
この一件を期に、迷いを吹っ切り、
自分の描く絵に誇りを取り戻した
芳藤の元には、本来のおもちゃ絵の
仕事の依頼が次々と舞い込みます。
そして多忙ながらも充実した日々の中、
芳藤に最期の時が訪れるのです。

かつて憧れた兄弟子・芳艶のように
忘我の境地で絵を描きながら、そして
亡き妻と、生まれることがなかった子供
との生活、あるいは師匠の娘・お吉との
再婚後の家庭など、叶う事がなかった
もしもの別の人生にも思いを馳せつつ
穏やかに眠るように旅立つ芳藤。

遠くで、猫の鳴く声がした。

この最後の一行に書かれた猫は、
果たしてあの黒猫だったのか・・・

最後の第三章は、かなりファンタジー
が入っていて、歴史上に実在した
歌川芳藤という”おもちゃ絵師”は
作中のようなウジウジした性格で、
弟子にも実子にも恵まれず孤独な晩年
だったのかどうかは、わかりません。
ま、今のご時世ネットで調べりゃ
ある程度わかるんでしょうけど、
そんなことが野暮に思えるくらい、
この作品の芳藤に感情移入してしまい
久しぶりに大切な一冊になりました。


それにしても、大切な事を気付かせる
為に現れる黒猫って、以前この
オススメのカテゴリーで紹介した
「さすらい猫ノアの伝説」にちょっと
似てますね。こういうミステリアスな
役は黒猫にピッタリですな。
ひょっとしてノアの先祖だったりして。

…しかし我が家にもこんなステキな
黒猫ちゃんがやって来てくれたと
いうのに、ワシの体たらくときたら
全く申し訳ないねえ

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ニャアコ
「あら、まだ先のことはわからないわよ
 この、わけのわからないブログだって
 数百年後には何かの間違いで歴史に
 残ってるかもしれないじゃない」

イロドリ
「ガハハハそれはないわ~
 …いや、待てよ、何でもかんでもダメ
 とか無理って決めつけず、信じて
 努力してゆくことが大切なんだよな。
 よし!ワシも頑張るで~!」

「まあ、たぶん無いとは思うけど」

「フハッどっちやねん」








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今年はネズミ年?よし!みんなー!尻尾を立てろー! [イロドリ写真館]

まあ、年が明けて1か月半も経ってから
言うのも何ですけど、今年は子(ね)の年、
ネズミの年ですね。
世間一般ではネズミといえば
ディズニーランドのミッキー&ミニー
そして、当ブログ的には
貧者のディズニーランドの ねずみ男(笑)
・・・と、言いたいとこですが、
ここは敢えて!

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↑これですね ( *´艸`)
時代の流れとはいえ、最近はこういうアニメ
が全くなくなって残念です。

そんなこんなで、今年最初のイロドリ写真館
をどうぞ♪

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妙に肖像画チックなニャアコ
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それだから みんなの幸せ祈るのさ

あたたかい 人の情けも
胸を打つ あつい涙も
知らないで育った僕は
みなしごさ
強ければ それでいいんだ
力さえ あればいいんだ
ひねくれて 星をにらんだ
僕なのさ
ああ だけど こんな僕でも
あの子らは 慕ってくれる
それだから
みんなの幸せ 祈るのさ
それだから
みんなの幸せ 祈るのさ

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いやあ~何が有り難いってね、8年間も
続けてる割にはいつまで経っても中身が
スッカスカで、年々記事も減って、しかも
いつアップされるかわからん当ブログを
今もちゃんと見に来て下さる方々がいると
いうね (´ω`*) もう、感謝感謝!

なかなかブログが進まない分、せめて
皆さんの幸せを祈らせていただきますよ~
(…で、無理矢理みなしごのバラードか!)


今シーズンの冬は、稀に見る暖冬という
ことで、年が明けても寒いんだか暖かいん
だかわからん日々が続いてましたが、本日
2月6日、ついにこちらでも初雪が降り、
そこそこ積もっておりました。
そして息子が熱っぽいということで医者に
連れていったところ、インフルエンザA!
折しもコロナウィルスの驚異が世界中を
席巻してる状況なので、皆様もどうぞ
外出の際などはお気をつけて。

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謎の美少女猫
「どうでもいいけど家の前に
 JASRAC が来てるわよ」
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