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これは本当に現実の出来事なんだろうか [雑感]

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2020年が始まって四分の一が過ぎた。
今年は本来なら東京オリンピックの年になる
はずで、期待と喜びの年明けだったはずが…

まさか世界中がこんな大変な状況になろう
とは、誰も想像出来なかっただろう。

そして昨日、志村けん さんが亡くなった。
信じられない。
何だかもう、どこまでが夢で、どこまでが
現実の日常なのかわからなくなる。

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せめて、このブログを見に来て下さる皆様が
守られますように、厄災よけとして水木先生
のアマビエの絵を載せておきます。

でも、神頼みのその前に・・・
自分自身も、そして周囲の人達も大切にする
為に、出来る努力はお互い頑張りましょうね
。そしてお互いを労わりあって、この
未曽有の脅威を乗り越えましょう。


イロドリウサギ&ニャアコ
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ネタばれ注意「おもちゃ絵 芳藤」 [オススメ]

後悔だらけの人生だ。臆病のせいで、
目の前にあった色んなきらめきを悉く
掴み損ねている。
傍から見れば馬鹿げた人生だと笑われる
ことだろう。
けれど。
あたしの人生は空っぽだったかもしれない。
それでもあたしの筆先にはすべてが
詰まってるんだねえ。
だから、絵師は止められないんだねえ……。

「おもちゃ絵 芳藤」三章より

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浮世絵師・歌川国芳

田舎住まいで情報に疎い私でも、ここ数年の
全国各地の美術館などで行われてる様々な
「国芳展」の情報や写真はかなり耳目にして
おりました。行けんかったけど…w
関心のない方も、こういう写真を一度は
見かけたことがあるのではないでしょうか。
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今回ご紹介する、谷津矢車さん著
「おもちゃ絵 芳藤」は、その歌川国芳の
弟子である、歌川芳藤が主人公の物語です。

これはねえ、ワタクシ的にはかなり面白
かったですねえ~
もともと永谷園のお茶漬けのオマケの
カードで安藤広重や葛飾北斎なんかに
慣れ親しんで育った世代なので、こうした
江戸時代の浮世絵や風景画には勝手に
親近感を抱いてたので、3年前に図書館で
この表紙を見た時はソッコーで借りちゃい
ました。

物語は、師匠であり天才浮世絵師だった
歌川国芳が亡くなった朝の場面から
始まります(笑)
師・国芳の葬儀の段取り、そして数多くの
弟子たちが才能を開花させ巣立っていった
画塾「国芳塾」を、師匠亡き後どうするの
かに悩む主人公・芳藤
この話を皮切りに第一章は主な登場人物の
紹介を兼ねて、いくつか事件が起こります。

弟弟子の芳年と幾次郎、兄弟子の芳艶、
元・兄弟子の河鍋狂斎(後の暁斎)、
師匠の娘であり、今はそれぞれ嫁いでいる
お鳥とお吉
全員、後の世にその名と作品を残す実在の
人物が活き活きと描かれております。
一文字違いの似たような名前で最初は混乱
するかも知れませんが、それぞれキャラが
はっきりと描きわけられてるので、すぐに
馴染みます。
この、兄弟弟子とか師匠との関係って
落語の世界にも似てますよね。
思わず高校時代に貪るように何度も
読み返した、三遊亭圓丈師匠の
「御乱心」を思い出しちゃいました。
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続く第二章も幕末から明治へと移りゆく
激動の時代の中で様々な出来事が起こるの
ですが、こちらは多くの別れがあり、
妻との死別、弟弟子との決裂、「国芳塾」
の閉鎖を経て芳藤は世の中からも周囲から
も取り残されます。

実はこの芳藤、およそ主人公とは思えない
ほどグダグダな性格に描かれてるんですよ
今で言うところの「自己肯定感が低い」
ってやつですかね(笑)
自分の才能を信じきれないが為に、いつも
あと一歩が踏み出せず、あと一言が言い
出せず、せっかくの大きなチャンスを
弟弟子に奪われようが、親子ほど年の
離れた新鋭の絵師にコケにされようが、
肚の中では”ムカっ”ときながらも
「自分はこんなんだから仕方ない」って
結局、納得しちゃうんです。

もともと「おもちゃ絵」というのは
子供が切り抜いて貼り付けて遊んだりする
、文字通り、玩具としての浮世絵で、
役者絵や風景画と比べると、当時は、やや
下に見られる扱いだったみたいですね。
他の弟子達が大胆な浮世絵でブレイクして
ゆくなか、いつまで経っても子供相手の
「おもちゃ絵」を生業としていることが
芳藤の自虐的な性格の一因にもなっている
ようです。
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実際の芳藤が遺した「おもちゃ絵」


そんな性格だから新聞社に就職した幾次郎
からの安定した職の誘いも断り、昔から
ほのかに思いを寄せ合っていて、同じく
伴侶に先立たれた、国芳の次女・お吉との
再婚の道も自ら断ってしまうのです。
もうこの芳藤のウジウジぶり、中途半端な
”いい人”ぶりがワタクシ的にはシンクロ率
1000%の感情移入!
…ただし決定的に違うのは本当は才能が
ある、というのと、イイ女にモテるという
ところが私とは正反対なのですが ( *´艸`)

こうして自身の不器用な生き方を受け入れ
全てを失った芳藤ですが、意外な救世主が
現れて彼を「おもちゃ絵師・歌川芳藤」と
して覚醒させるべく導いてゆくのです。

その意外な救世主とは!

何と!何と!

名もなき「黒猫」だったのでありました~
(ΦωΦ) なーん、

最後の第三章はこの黒猫が、時には
励まし、時には諭すかのように
「なーん、」と鳴きながら孤独な芳藤に
寄り添います。
いや~全国のクロネコJAPANの同志の
皆さん、萌える展開ですね~
これだけでも読む価値があるってもん
ですぜ。

特に極めつけはラスト近くのこの場面

気分転換にフラリと散歩に出た芳藤が
いつの間にか先回りしていた黒猫に
誘われるように細い路地裏を四苦八苦
しながら通り抜けた先に、今まで見た
ことがない版元の店先に辿りつく。
そこでその版元の店主に10年前に
自分が描いた絵をベタ褒めされただけ
でなく、来る客、来る客が皆、自分の
絵を幸せそうな顔で買って帰る姿を
目の当たりにし、自分が描いてきた
ものが、自分がやってきたことが、
間違っていなかったと実感するのです。
…って「コンビニたそがれ堂」かよw

おそらくこれは芳藤に、自分の絵に
対する本当の思いをわからせる為に、
黒猫が見せた幻なんでしょうけども
この一件を期に、迷いを吹っ切り、
自分の描く絵に誇りを取り戻した
芳藤の元には、本来のおもちゃ絵の
仕事の依頼が次々と舞い込みます。
そして多忙ながらも充実した日々の中、
芳藤に最期の時が訪れるのです。

かつて憧れた兄弟子・芳艶のように
忘我の境地で絵を描きながら、そして
亡き妻と、生まれることがなかった子供
との生活、あるいは師匠の娘・お吉との
再婚後の家庭など、叶う事がなかった
もしもの別の人生にも思いを馳せつつ
穏やかに眠るように旅立つ芳藤。

遠くで、猫の鳴く声がした。

この最後の一行に書かれた猫は、
果たしてあの黒猫だったのか・・・

最後の第三章は、かなりファンタジー
が入っていて、歴史上に実在した
歌川芳藤という”おもちゃ絵師”は
作中のようなウジウジした性格で、
弟子にも実子にも恵まれず孤独な晩年
だったのかどうかは、わかりません。
ま、今のご時世ネットで調べりゃ
ある程度わかるんでしょうけど、
そんなことが野暮に思えるくらい、
この作品の芳藤に感情移入してしまい
久しぶりに大切な一冊になりました。


それにしても、大切な事を気付かせる
為に現れる黒猫って、以前この
オススメのカテゴリーで紹介した
「さすらい猫ノアの伝説」にちょっと
似てますね。こういうミステリアスな
役は黒猫にピッタリですな。
ひょっとしてノアの先祖だったりして。

…しかし我が家にもこんなステキな
黒猫ちゃんがやって来てくれたと
いうのに、ワシの体たらくときたら
全く申し訳ないねえ

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ニャアコ
「あら、まだ先のことはわからないわよ
 この、わけのわからないブログだって
 数百年後には何かの間違いで歴史に
 残ってるかもしれないじゃない」

イロドリ
「ガハハハそれはないわ~
 …いや、待てよ、何でもかんでもダメ
 とか無理って決めつけず、信じて
 努力してゆくことが大切なんだよな。
 よし!ワシも頑張るで~!」

「まあ、たぶん無いとは思うけど」

「フハッどっちやねん」








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