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喜びなき勝利 (おっさん10) [はたらく おっさん]

オレ達は誇りうる・・・・・・・・

物語がある・・・!

ガキの頃から・・・・・・

何度も言われてきたはずだ・・・!


男だろ・・・って・・・!


困ってる人・・・・・・・力のない人達を・・・見捨てんな・・・!

ひとつを何人かで分ける時は・・・・・・・・・譲ってやんな・・・!

荷物は・・・・・・

黙って重い方を スッ・・・と持つんだぜ・・・・・・・・・!

ともかく・・・・・・・いつも損をしてな・・・・・・・・!

そして 笑ってな・・・!
                          

                              福本伸行「最強伝説 黒沢」第10巻より

   ◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆◆◆◆


こうして病院の現場のトップである看護部長が師長会議で決議して下さり、文章にして末端に

至るまで徹底して下さったおかげで、我々 清掃員は奴隷のような扱いから解放された。

5年めにしてようやく勝ち取った権利だった。


別にサボりたいと言ってるわけではない、休憩させてくれと言ってるわけでもない、ましてや

賃金をあげてくれなどと訴えてるわけでもないし協力したくないと言ってるわけでもない、

私らで出来る限りのことは協力もする、ただ、

決められた時間と人数で少しでも病院を綺麗にしたいので、無茶な呼びつけは勘弁してほしい

という、至極当たり前の内容を訴え、それが承認されたというだけの話だ。

ただ、契約の内容が若干変更するということで事務的な手続きも行われた。


会社にも、窓口である総務にも黙っての直訴だったので 当然、風当たりは強かった。


総務からは「何でもやります。っていう契約なんだから、どんな内容でも要求された事には

対応するんが契約だろうが」みたいな感じで嫌味を言われた。

言ってることは正しいのだが常識的にも物理的にも無理なものは無理なのだ。それに

そんなこと言うなら引き抜きなんて汚いマネはヤメろやボケと喉まで出掛ったが、言って

しまうとこれまでの苦労がパアになってしまうので黙っておいた。


そして元凶である「全部やります、何でもやります」という信じられない契約をした我が会社は

全く他人事だったが「いらん事して病院を刺激して仕事がもらえなくなったらどうするんだ」と

言いたげなのがミエミエだった。

当然、この尻拭いに対して評価も無ければ報酬もなし、あくまで私が勝手にやったこととして

処理された。


一円の得にもならない無駄な苦労だったが、それでも職場のおばちゃん達が喜んでくれれば

まだ救いがあった。

アホな会社おかげで毎日ボロ雑巾のように扱き使われる パートのおばちゃんたちに、

ちょっとでもラクにさせるには、「契約の見直し」という根本的なことしかもう解決策がなかった。


そして交渉したのは私だが、それは日頃の皆の真面目な働きぶりがあったからこそである、

いわば皆で勝ち取った勝利なのだ。



だが、しかし・・・

職場のおばちゃん達の反応は妙に冷めていた。

確かに疲弊しきって喜ぶ余力もなかったのかもしれないが、それを差し引いても、

どう見ても「嬉しい!」という雰囲気ではなかった。

それどころか信じられない情報も耳にした。

何と

「私達が一生懸命 働いてる間、主任(私)はサボってラクばかりしてる」

という不平の声があがっているというのだ。


情けなかった。

頭の中を「残酷な天使のテーゼ」が流れ、エヴァのオープニングのように黒地に白文字で

「無駄骨」「尻拭い」「反乱」「無能」「左遷」などの、ありとあらゆるネガティブな言葉が

サブリミナルでチカチカと点滅していった。


まあ、言ってるのは2~3人で、主に1人が煽ってるだけらしかったので放っておいたが

実はこれは根深いものがあり、次の事件への火種として燻り続け、やがてそれは

数ヵ月後に爆発することになるのだが、それはまた別の機会に・・・(も~嫌っ)


さすがに多少のショックと虚しさは感じたが、40数年の人生がずっとこんな感じだったので

立ち直るのも早かった。

おそらく、性格上これからもきっと こういう事の繰り返しになるのだろう。

(つづく)



























































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コメント 5

マンチ軍団

面白かった・・です!
by マンチ軍団 (2012-07-21 20:22) 

青竹

元凶は奴隷に自らを貶めるような契約をした会社にあるのですが、必ずどこか中間に位置する立場の者に責任を負わせようとするのが組織です。
そして助けたはずの人から批判されることもありますね。
そんなとき、性善説には間違ってもなれず性悪説こそが真理なのだと思い込み勝ちです。
足をすくうのはほんの一握りの人なのですが、その他大勢は案外そのような意見に従ってしまいます。烏合の衆という言葉のように。
つらいですね。
by 青竹 (2012-07-21 21:34) 

irodoriusagi

マンチ軍団さま
お久しブリーフです、ありがとうございます。
「放尿息子の帰還・後編」で現在のウチの子猫たち
が出てますので見てやって下さいね。

青竹さま
いつも心の支えになるコメント、本当に感謝します。
やっぱり皆、何かに対して不満をぶつけないと
やってけないのだと思います。
ただ、何で俺に対してやねん!と言いたくなりますが・・・
by irodoriusagi (2012-07-21 22:25) 

ちろる

お疲れ様です。
西洋のことわざで言う、
「ボートをゆらすな」
といったことなのでしょうか。
この組織で生き残っていくのは
大変な苦労を伴いますね。
非常な努力のあとが読んで取れます。
by ちろる (2012-07-22 19:56) 

irodoriusagi

ちろるさま
嬉しいコメントありがとうございます。
ウチの会社はホントにすごいですよ~(笑)

by irodoriusagi (2012-07-26 15:18) 

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