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乾いた大地 [はたらく おっさん]

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もしも 夢があるのなら
すてよう 今は つらいから
明日の生命 (いのち) を つなぐため
今日と いう日が消えてゆく

「乾いた大地」作詞:井萩 麟 / 作曲:馬飼野 康二


これは今から20年以上前にやってたアニメ
「戦闘メカ ザブングル」のエンディングテーマで
串田アキラさんが歌ってました。いい曲です。
2番の歌詞ですけど。

で、何の話やねんというと・・・


先月1か月で、パートのおばちゃんが2人も
辞めてしまい、ただでさえ人手不足だったウチの
職場は大変なことになってまして、責任者である
ワタクシ自ら清掃用カートを押しながら病室掃除
からトイレ掃除などをやらせていただいとるわけ
なのですが、何というかアレですね、病棟では
20代のうら若き看護師や看護助手の方々が
医療器具を携え、テキパキと各病室を駆け回り、
60代のベテランナースや師長自らが患者さんの
体拭きや食事の介助を手伝ってるという光景の
中で、働き盛りのいい年をしたオッサンが
延々とトイレ掃除をやっとるわけですよ・・・
申し訳ないというかなんというかね・・・

ふと、向こうのほうを見ると、前述の記事
「あんたこの底辺職場どう思う」で登場した問題児
マサル君が、これまた清掃カートを超スローモーな
動きでノロノロと押しながらブツブツ独り言を
言いつつゴミを回収して回っておりました。

まあ、別に私も毎日毎日トイレ掃除だけをやってる
わけでなく、1現場の責任者として、働いてくれてる
おばちゃん達が仕事しやすいようなシフトを組み、
誰かが院内でヘマをしたり物を壊したりした時は
代わりに怒られ、マサル君のように意欲はあっても、
ちょっと問題を抱えてるような子や、障碍者枠で採用
されて来ている人たちを差別することなく平等に扱い
つつ、尚且つ彼女たちが問題が起きないように、無い
知恵を絞り、ちっぽけな心を砕きながら配慮しておる
わけです。

誰からも感謝されることなく、更に1円の手当がつく
わけでもなく、病院側や会社からの理不尽な要求と、
パートのオバハン達の完全に「甘え」としか言いよう
のない日々の不平不満や要求の板挟みになりながら、
現場を護ってるという僅かばかりの自覚もあります。

とはいえ、この日この時の、目の前で慌ただしく
患者さんの為に駆け回る看護師さんの姿は本当に
輝いて見え、対照的に、次から次へとほぼ100%の
割合で汚れてる便器と格闘しつつ、女子トイレの
掃除の際には、リハビリの若い理学療法士の
お姉ちゃんに変質者を見るような視線を向けられ
ながら、トイレットペーパーの補充をしてゆく
自分の姿が何とも卑小に感じられたのでありました。


若いころは、何か、人の役に立つ人間になりたいと
希望に燃えていたはずなのに、今では日々の生活の
為に神経と体力をすり減らしながら日銭を稼ぐような
人生・・・
一体どこで間違ってしまったのか、いや、もともと
「その程度」の人間でしかなかったというだけの
話ではないか。

そう開き直って、連日の人手不足による便所掃除の
繰り返しにも慣れ、聞こえない程度に鼻唄で
レインボーマンの「死ね死ね団の歌」なんかを
歌いながら働いてたある日、病院の廊下で、以前
入院していたおばあちゃんと出会った。
家が近くみたいで退院してからも娘さんに付き添って
もらってちょくちょく通院してるらしい。

「あら、お母さんお久しぶりです」

と、挨拶すると最初は誰かわからなかったみたい
だが、しばらく私の顔を眺めてから

「ああ、あんたアレやな。ビンのフタ開けてくれた
 なあ・・・」

「?」

一瞬、何を言ってるのかわからなかったが、どうやら
入院してる時に、小物か何かが入った瓶の蓋が固くて
なかなか開かなかったのを、掃除に入ったついでに
開けてあげた時の事を言ってるらしかった。
もちろん、基本的に掃除屋は勝手に患者の言う事を
聞いてはいけないので、この時は近くにいた
看護助手に伺いをたてて瓶を開けてあげた。

「よっぽど嬉しかったんやろねえ」

隣にいた娘さんが言った。


そうなのだ。忘れていた。


おばあちゃんの瓶の蓋を開けてあげたことを!

・・・じゃなくて(笑)掃除という仕事を通して、
些細な事に喜んでくれる人が、たとえ僅かでも
存在していることを。

病院に来る度に缶コーヒーを差し入れでくれる
患者のおっちゃんがいることを。

朝、玄関のロビーの拭き掃除をしていると、
「アンタも朝早くから大変やね」と言って自販機で
缶コーヒーを買ってくれた患者のばあちゃんが
いたことを。

「私ね、あなたのファンなのヨ、あなたの会社
 だったら仕事頼んでも大丈夫ね」と言って
自宅であるお屋敷のハウスクリーニングの仕事を
ウチの会社に任せて下さったご婦人がいたことを。

「あなた達はホントに縁の下の力持ちよ、この
 病院の宝よ」といつも褒めてくれてコーヒーを
御馳走してくれた看護部長がいたことを。
(どんだけいろんな人にコーヒーもらってんねんw)

「お兄さんいっつも笑いながらお仕事されてますね」
と褒めてくれた患者さんがいることを。


思い出した。

「どこかで誰かが見ていてくれる」ことを。


こんな立場になってしまったのは自分の責任であり
今更周りを見て我が身を嘆いても仕方がない。
たとえ底辺の仕事でも懸命にやって、もし誰か1人
でも喜んでくれる人がいるなら頑張ろうではないか
と思い直したのでありました。

(おわり)

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「zzzzz・・・」

話が長すぎるうえに、つまらなさ過ぎて
途中で寝てしまった謎の美少女猫

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コメント 2

yes_hama

些細な感謝、嬉しいですね。
つらくい仕事をされていても、irodoriusagiさんのお人柄を皆さんはちゃんと見ておられたのですね。^^)
by yes_hama (2016-09-16 21:54) 

irodoriusagi

yeshama さま

やっぱりどれだけ割り切ってても
「ふと我にかえってしまう瞬間」
って、あるんですよね~

いつもこうして職場や家やブログで
皆さんに励まされながら何とか
がんばっております。
ホント感謝でございます。

by irodoriusagi (2016-09-18 14:03) 

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