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朝帰り家族・再び(後編)

まだまだ日中の暑さも厳しかった8月下旬。

夜中に脱走が発覚したニャアコ一家7匹。

午前2時すぎ現在で確保は3匹。

仕事への出勤まで準備の時間を含めて、タイムリミットは残り約3時間か・・・。


ご近所への迷惑を考えると何とか全員捕まえておきたいところだ。

7匹全員が似たような黒猫なので、確保して家の中にいる3匹が誰なのか

わからないが、ニャアコとチーがまだ帰ってきてないのだけは、

見た目で判断出来た。

ニャアコの場合は脱走した時の「憩いのスポット」があって、

飽きたらすぐ帰って来るのがわかってるので実質は子供3匹か。

自分達で勝手に脱走してるくせに帰ってきたとき締め出しをくらってると

逆ギレして、家の周りで泣き喚かないように窓を開けて帰りを待つ。

「ニャーーーー」

遠くのほうで声が聞こえた。

「おーい、誰かしらんけど早よ帰ってこーい」

「ニャー」

返事は聞こえど、帰ってくる気配はない。

「くそ!迎えに行かんとアカンのか世話が焼ける~!」

ツッカケを履いて勝手口から外に出る。

この時に注意しないといけないのは、確保だけに気をとられて、

捕まえてから家の中に放り込む時、再脱走に向けてドアの前で

既にスタンバってる奴がいて、ドアを開けた瞬間に入れ違いに

飛び出してゆくのだ。

こうなってしまうと、せっかくの努力も振り出しに戻ってしまう。

そう、去年、最初の5匹家族大脱走の時はまるでドリフの

コントのように延々とこれを繰り返し、エライめに遭わされた

経験からコツを編み出したのだった。


唯一の街灯と月明かりを頼りに外に出て様子を見る。鳴いてる奴は誰だ?

おっと、よりによってお向かいさんの家の前で鳴いてる1匹を発見。

帰ってきたそうな素振りは見せるが、近づくと逃げる。

家に戻るふりをすると、ついて来るのだが止まって近寄るとまた

距離を開けようとする。

そんなこんなの一進一退の攻防を続けていると、我々の横を無灯火の

自転車が音もなく通過していった。こんな時間に誰や?と思って

見てみると明らかに中学生か高校生にしか見えない男女が

二人乗りで田舎道の向こうの方に無言で走り去って行った。

近所の子だろうか?今何時やと思っとんねん。いくら夏休みでも

おかしいやろ、親は心配しないんだろうか?

それはさておき突然のチャリの通過で一瞬、脱走者も遠くに

逃げかけたが、押したり引いたり、まるで「人生は綱引きだ」の

如く駆け引きを繰り返し、ようやく無事確保。

これもニャアコでもチーでもなかったが


この時、午前3時。残り3匹、安全パイのニャアコを除けば、

あと子供2匹!いけるか?


出勤までのタイムリミットは2時間、何とか期待を込めて

部屋の窓を全開にし、聴力を研ぎ澄ます。

が、さすがに午前3時を過ぎると猛烈に眠気が・・・

ウトウトしてると窓の外から何やら声が聞こえてきた。

睡魔の誘惑に抗いながら何とか起き上がり窓の外を見ると

すぐ真下に2匹、まるで会話してるかのように寛いでいた。

よっしゃー!一気にいくぜー!

眠気も吹き飛び早速回収すべく外に出た。

警戒されないように、そーっと近づく。

毎日一緒に生活してんのに何でこんなに気を使わんと

アカンのか、トホホホ。

しかし脱走組もそろそろ飽きがきてたのか2匹のうち

1匹は簡単に捕まえれた。

「よし、お前も中に入るぞ」

残ったもう1匹に話しかける、何と意外にもそれはニャアコだった。

「おい、ニャアコ入ろうぜ」

抱き上げてやろうとするとサッと身を翻す。

でも遠くまで逃げてゆくわけでなく、この場でもう少し

涼んでいたいって感じだ。


そういえば去年の今頃は町内の体育部長としての仕事の多忙さが頂点に達して

おり、毎日毎晩、やれ運動会だ地蔵盆だバレー大会だと準備に追われ、徹夜で

プログラムを作ったりして、息抜きに夜中にニャアコと一緒に外に出て

コンクリートの地面に寝転がって星空を見上げたり、虫の声を聞きながら

2人で秋の訪れを実感したりしてたよなあ・・・

何か急にふと懐かしくなって、その場にゴロンと寝転んだ。

仰向けになって星空を見上げる。

日中はまだまだ暑さが厳しいが、さすがに明け方はそろそろ秋の気配を

感じさせる涼しい風が吹いていた。

ニャアコも逃げるでもなく、私の真横でコンクリのヒンヤリとした

感じを楽しんでいた。

1年ぶりのニャアコとの外でのひと時。

だが、いつまでもそうしてるわけにもいかず、早々に家に入ることにする。

ニャアコは嫌がって抵抗するかと思ったが、あっさり一緒に家に入ってくれた。


さて、残る1匹は・・・?

そう、一番特長がある団子尻尾がまだ帰ってきてない。

チーの奴どこ行ってんだよ。


最悪の時間切れアウトも覚悟したが、最後に自分だけが残った

ことを悟って焦ったのか、チーは午前4時過ぎに観念して玄関先に

「自首」してきた。


ふーっ、終わった。ミッション完了!よかったよかった。

こうして7匹に増えたニャアコ一家の初めての脱走劇は無事に幕を閉じた。

明け始めた空はもう紫色に染まっていた。

(おわり)


P1020078.JPG

この写真は今回のものではなく、去年の「雑感・朝帰り家族」の記事で使わなかった
ボツ写真です。








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コメント 2

青竹

ニャアコはまったりとした二人だけの時間を過ごしたいの
かもしれません。
チーは最後になって急に不安になったみたいですね。
でも全員無事で良かったです。
by 青竹 (2013-09-10 07:15) 

bonita

どきどきの展開でしたが、全員無事に帰ってきて
良かったですね~☆
まるで小説を読んでいるようで、文章が上手いなぁって
感心いたしました(^^)v
by bonita (2013-09-10 13:14) 

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