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貧者のディズニーランド(その10) [貧者のディズニーランド]

やはりというか、まさかというか、ニャアコは家に居なかった。

「あんにゃろう、どっから脱走しやがったんだ!」

よくよく調べてみると、今までチェックしてなかったガラスの

割れ目がもう1箇所あった、ここから出たのか・・・

楽しい思い出も吹き飛ぶ脱力感だ。

帰りの車の中で既にウトウトしていた子供達は早々に布団を

敷いて寝てしまい、妻も呆れて風呂に入ってすぐ寝てしまった。

私も12時前までは、いろいろ時間を潰しながらニャアコが帰って

来るのを待っていたが、次の日も5時半出勤なので諦めて寝る

事にした。


ニャアコよ・・・ワシらだってたまには、このウチを長く離れることも

ある、それがお前には耐え切れないのか・・・


モッズの往年の名曲「バラッドをお前に」の歌詞のような気持ちで

眠りについた。


気になって熟睡できてなかったせいか、寝ている最中に遠くで

猫の鳴き声を聞いたような気がした。

気のせいかな、今何時だ?

午前3時

確かに声が聞こえる、しゃあねえな連れて帰るか。

ケータイの明かりを頼りに外に出た。 あ、居た。

近づいてゆくとスタスタと歩いてゆく

逃げるような誘うような微妙な速度で、捕まえれそうで

捕まえられない。 「ニャアコ待て、このヤロー」

すると突然ニャアコは道の真ん中で悶えだした。

背中が痒いのか、留守中に変なものを食べたのかと心配

したが、どうやらそうではないらしい。


午前3時過ぎに月の光を浴びながら道の真ん中で悶えてる

前脚の折れた黒猫・・・怖い。

私が他人でこの場に遭遇したら、たとえ遠回りになっても

道を変えていただろう。


その場所はかつて、まだニャアコを[ハチ]と呼んでたノラ時代に

ウチに餌だけ食べに来てた頃、家の外に餌の入った皿を準備

してると私の姿を見つけてビッコをひきひき「ニャー」と

駆け寄ってくる姿があまりにもいとおしくて、思わず

リチャードギアの真似をして「HACHI!」と呼びながら抱擁した

場所だった。


その顔を見たくって俺はボロボロになる・・とまたしてもモッズの

歌詞のような気持ちで悶えるニャアコを抱き上げて家に入る

ことにした。


夜空には綺麗な月が浮かんでいる。


「ああ、秋が終わったんだな」

何がどうというわけではなかったが、そう思った。

ニャアコを抱き上げながら、確かに冬の足音を聞いた気がした。

(次回エピローグで ようやく「貧者のディズニーランド」終わります)





































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コメント 3

青竹

ご訪問くださり、ありがとうございます。
ニャアコは、月夜の散歩を一緒に楽しみたかったのでしょうか。
by 青竹 (2012-06-14 20:40) 

空楽

猫は夜行性なので色々な楽しみを持ってますにゃ~
by 空楽 (2012-06-15 15:06) 

irodoriusagi

青竹さま
ありがとうございます。
一緒に楽しみたくて誘ってくれてたのなら嬉しいんですけど、どうも発情期だったみたいです・・・

空楽さま
いつもありがとうございます。
そうなんスよ、我が家は毎晩「真夜中のキャッツシアター」と化してます。
by irodoriusagi (2012-06-15 20:53) 

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