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動物病院へ(その5)

「その猫・・・」

(ドキッ!何やろ!?)

「すっごい可愛いですね!」

「・・・え?あ、いやまあ・・・ははは」


てっきり「その猫・・・ちょっとうるさいんじゃないですか!」

と、でも言われるのかと身構えていただけに拍子抜けしてしまった。


最初、皮肉か愛猫家の社交辞令かと思ったが、そのお姉さんはキャリーの
窓から見えるハチの顔を覗きながら何度も

「すっごい可愛いですよねー」

と、連呼してくれた。

猫なんて大体みんな似たような顔なんじゃないかとも思ったが嬉しかった。


実は脚が折れている事や、この間まで野良だったことを話すと

「絶対、責任もって面倒見てあげて下さいね」と言われた。

お姉さんは会計で支払いを済ませてる最中も、窓口の職員さんに

「ねー可愛いですよね~ジジみたい~」と言ってくれていた。

ジジって何やったっけ?と思いながら褒め殺しにデレデレになってると

「その猫、最後まで飼ってあげたら絶対いいことあるよ!」

と、なぜか最後はタメ口で預言めいたセリフを残し愛猫(犬だったか?)
と共にお姉さんは帰って行った。

これがドラマだとお姉さんと偶然再会して、話が進展したりするのだが

もちろん現実は全くそういう方向には向いてくれないのだった。      (つづく)


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