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無脳男(後編その①) [はたらく おっさん]

ある日の仕事中、病院の建物からちょっとだけ離れてる
デイサービスの清掃に時間指定で行ってもらってる
マサル君が、約30分程の仕事を終えて病棟に戻ってくる
なり私を見つけてこう報告した。

「あの・・・デイサービスの係長が、イロドリさんに
 話したい事があるそうです・・・時間はいつでもいい
 のでデイサービスまで来てくださいとの事です」

「・・・」

モーレツに嫌な予感がして、思わず

「え!? まさか、お前のクレームの事と違うやろな !?」

と言いかけたが、やめておいた。
ひょっとしたら、今年のワックスがけの日程の相談かも
しれないし、日常の清掃では落としきれない床の汚れの
相談かもしれない、いや、頼む、そうであってくれ~と、
祈るような思いで早速デイサービスへと向かった。

何を言われるのかヒヤヒヤしながら、仕事中の責任者に
挨拶をすると・・・

「あー、どうもお疲れ様です。忙しいのにわざわざ
 来てもらってすいません。実は、毎日ここに掃除に
 来てくれてるあの、若いお兄さんの事なんですけど」

ひーーーーーっ!やっぱりアイツのクレームやんけー!

苦情の内容はこうだ
デイサービスの掃除は、毎日、朝と夕方に行くのだが
夕方、掃除を終えて帰る時、ちょうど利用者である
おじいちゃんや、おばあちゃんの帰る時間と一緒に
なる。で、建物の入り口がちょっと長めのスロープに
なってるのだが、杖や歩行器でゆっくり歩いてる
お年寄りの前を、大きなゴミ袋にゴミや使用済みの
オムツをパンパンに詰めて両手に持ったマサル君が
フラフラと歩いて邪魔になったり、時には前を
横切ったりして、お年寄りの利用者さんが転びそうに
なったり、つんのめりそうになって非常に危険なので
責任者であるイロドリ主任から、ぜひキチンと指導
して欲しいというものだった。


これが高校生のバイトとか、学校卒業してすぐの子
とかならまだわかる、しかしマサル君は今年でもう
この職場7年目になる30近いオッサンだ。
病院・老人保健施設・デイサービス、どの現場の
どんな状況であっても、絶対に、利用者・患者を
最優先で!と、何度も何度も何度も何度も何度もこの
7年間言い続けてきた。

しかも!しかもである、
この2日前、ウチの会社で「病院清掃担当者の勉強会」
なるものが開かれ、イロドリチームだけでなく他の
病院の清掃に派遣されてるメンバーも全員参加で
院内の清掃に関する心構えや基本中の基本的なことを
勉強したばかりなのに~!。

因みに講師は私、イロドリ主任であり、マサル君は
講師直属の部下らしく最前列でウンウンと頷きながら
メモをとっていた。
この時も確かにイロドリ講師は
「如何なる時も、患者様・利用者様を最優先で!」
と、熱弁をふるっていたはずだ。
一体、何をメモしていたのか(笑)

とりあえず、デイの係長には、常識以前の問題で
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
2度と同じことをしないようにキチンと指導します。
と約束して病棟に戻った。
ここで今回のタイトル・・・

「無脳男」!

ジャ~ン ♪ (アホか)

生田斗真くんが映画で演じた「脳男」は、一度
見たものを完璧に記憶し、経験がなくてもそれを
実践できるという特殊能力の持ち主だった。
対するマサル君は、7年間ずっと言われ続け、更に
昨日教えられたことすら忘れてしまうという、
ある意味これも特殊能力の持ち主か・・・
共通してるのは無表情なトコくらいだが。

病棟に戻り、今回の苦情をどうやってマサル君が
理解できるように伝えて再発を防ぐかと考えながら、
中断していたトイレ掃除を再開しようとしたところ
病室の掃除をしてくれてる、ウチのチームで唯一の
常識人のお姉ちゃん「おしゃれ番長」が居たので
先程の出来事を冗談半分で話したところ

「ああ、ちょうど良かった。私も今さっき
 マサル君の事で看護助手さんから苦情を言われた
 ところなんですよー」


えええ~~~~~~!? なんやねん、それーーーー!



(予想外に長くなってしまったので後編その②に続く)

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