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「死」の誘惑(中編)  [「死」の誘惑]

いくつかの地方紙で現在も連載中の、村山由佳さんの
小説「風は西から」
ウチの地域で配達されてる新聞では今年の5月から
連載が始まっていたみたいですが、私が興味を持って
読み始めたのは夏からでした。

何の予備知識もなく途中から読み始めた私はてっきり
ブラック居酒屋で働く主人公の青年・健介が心身共に
ギリギリまで追い詰められながら、恋人の千秋に
支えられて立ち直り、実家の広島に帰って両親の
料理屋を継いで、妻となった千秋と共に繁盛させて
ゆく成長物語だと思ってました。

しかし、昨日の第157回で健介が自ら命を絶って
しまっていたことを千秋は心配になって駆け付けた
彼の社員寮で警察から知らされるという衝撃の展開
になったのです。

何だコレ?昔からよくある「恋人の死を乗り越えて
新しい相手と幸せを見つけ出す悲劇と再生の物語」
とかいうアホ丸出しの胸糞小説かよ・・・と
ショックも冷めやらぬうちに、ネットで検索して
みたところ、連載開始直前の広告の写真があって
そこにはデカデカと

「なぜ、彼は死ななければならなかったのか?」

という文字が書かれていました。
そう、彼は最初から過労死する設定なのでした。

この物語は連載が始まる前から
ブラック企業に恋人を奪われた女性が彼の両親と
共に裁判で真実を明らかにする戦いを起こす
というテーマだったようです。

しかし私のように、単なる恋人の成長の話だと思って
読んでて感情移入した登場人物が死んでしまうのも
衝撃ですが、最初から死ぬとわかってる好青年が
半年近く延々と追い詰められてゆく姿を読まされる
第1回からの読者もキツいものがあったのではない
でしょうか。

ほとんど誰も読まないとわかってるこのブログで、
この小説のことを書いたのは、健介がまさに
日に日に死に向かって追い詰められていってる
その最中、電通の女性社員の痛ましい報道があり、
また、その事件の関連として同じように自ら命を
絶った「和民」の女性社員の遺族が8年目にして
勝ち取った和解金の一部で、ブラック企業を訴える
基金を創設した、という出来事を知り、そして
ちょうどこの時、私自身が本当に行き詰って
「もうこれ死んだほうがラクなんじゃねえか?」
と、考えるようになっていたからです。


(つづく)


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