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「死」の誘惑(前編) [「死」の誘惑]

ここ数日、私なりにいろいろ考えていることを書こう
と思います。
ただ、たいそうなタイトルに反して記事の内容は
あまりにも浅く、薄っぺらで「読んで損した」とか
「時間を返せ」と、なること請け合いですので
貴重なお時間を無駄にしたくないという賢明な皆様は
どうぞ遠慮なく、ここで終了してくださいませ。


この2~3年ずーっと朝早くからの出勤で、新聞を
ゆっくり読む時間もなくて、よほど気になる出来事が
あった時以外は、そのまま読まずじまいになって
しまう日も多かったんですが、今年の夏くらいに
オリンピックが気になって、じっくり紙面を隅々まで
読んでた時に、連載してる小説に興味を持ちました。

私が読み始めた時の内容は、あの悪名高きブラック
居酒屋をモデルにした店で、主人公と思しき青年が、
ただでさえ殺人的に忙しい店内で、次から次へと
まるで冗談のように襲い掛かって来るアクシデントに
翻弄され、疲弊しているという状況でした。

「あ~、わかる!わかるでぇ・・・この感じ
 ワシと一緒やがな。わかるわぁ~ウンウン」

すっかり彼の置かれてる現状に親近感を覚え、続きが
気になってそれから毎日その小説を楽しみにする
ようになりました。

が、しかし、日々読み進んでゆくうちに、とある
残酷な現実に私自身が打ちのめされます。
てっきり私と同じ、孤独の中で奮闘してると勝手に
思っていたその青年、健介には千秋という名の恋人が
いたのであります。
しかも、その千秋という恋人が才色兼備で仕事が
バリバリ出来るうえに、健介のことが好きで好きで
たまらないという「こんな奴いねえよ」と言いたく
なるような理想的な女性なのですよ。

「うっわ、出た。なんやこのベタな設定は!こんな
 恋人がおったら仕事の大変さなんか屁でもない
 やんけ!これやったら家族からも見捨てられとる
 ワシのほうがよっぽどキツいわ・・・アホかよ」

あまりの羨ましい環境に同情も親近感も消え失せ、
もう読むのやめようと思いつつ、果たして健介は
どうやってこのブラック居酒屋を辞めるのか、
その一点だけが気になって、その後もずっと読み
続けていたのですが、お互いを大切に思いあっている
にも拘わらず、千秋の仕事の充実ぶりとは対照的に
健介の状況はひどくなる一方で、自分の時間を犠牲に
しながら人手不足の店を切り盛りしているのに
上層部からは嫌がらせや吊し上げ、部下のバイト達
からは表向きは心配してくれてるように見えて裏では
無能扱いの陰口・・・

「まあ、でも千秋に励まされて乗り切るんやろ」

そう醒めた目で読みつつも、その肝心な千秋との命綱
であるコミュニケーションを忙しさに遮られ、生活も
性格も荒んでゆく健介を見てると心配になり、毎日
毎日ちょっとづつちょっとづつ悪化してゆく現状を
見せつけられるとだんだん不安になってゆきました。

どれだけ仕事が充実していても、いつも健介の健康を
心配している千秋と、彼女を愛していながらも
疲れ果て、心身ともに蝕まれてゆく健介。

大きな仕事を成し遂げ、上司や同僚との祝勝会とも
いうべき食事会の最中に電話が鳴り、短い会話ながら
久々に健介の声を聞き安心したのも束の間、数日後
「ゴメン」という健介からの一言だけのLINEを最後に
連絡がつかなくなり、胸騒ぎを覚えて仕事帰りに
健介の社員寮に向かう千秋。

新聞の連載枠という限られた短いスペースで毎日毎日
丁寧に、健介のもとへ急ぐ千秋の不安な心情が描かれ
これでもかと読者も煽られた末に、ようやく辿り
ついた健介の社員寮で、千秋は健介が飛び降り自殺で
亡くなった事を知らされます。

「え?え?え?何コレ?何コレ?何の話やねん!?」

何の予備知識もないまま途中から読んでいたので
どういう作品なのか全くわからなかったのですが
この小説はブラック企業による過労死によって
愛する者を奪われた主人公が、彼の死の真相を知る
為に遺族である恋人の両親と共に裁判で戦うという
テーマだというのを、今日、初めて知りました。

2016-10-15_15.06.37.jpg

現在も様々な地方紙に連載中の、
村山由佳さんの「風は西から」です。

(つづく)





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