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走れ息子 (中編) [オトンは厄年、息子は当たり年]

約20の町内の住民たちが、毎年小学校のグラウンドに集結し、熱い戦いを

繰り広げる「地区の大運動会」

私が体育部長だった2年前は台風の為に中止になってしまったが、昨年は

見事に晴れ渡った絶好の運動会日和だった。

それぞれの地域が定められた場所に町名の書かれたテントを張り、さらに

その周辺に、テキ屋も出店したりして、もう本格的で、実に壮観な眺めだ。


前々年の優勝チームである町内の体育部長の選手宣誓が行われ、いよいよ

運動会が始まる!


約20の地域とはとはいえ、もちろん住民の多い少ないは当然ある。

我がイロドリ町は戸数的には標準だが若者が比較的他の地域より多く、しかも

その「イマドキの若者」よりも遥かに血気盛んな50~60代が数多く存在しており、

この「地区の大運動会」では3年前まで何と9連覇していたのだ。

3年前に王座を明け渡し、奪還を目指した前年は台風で中止、ということで

昨年の大会は例年以上にご近所さんも燃えている!・・・はずだったが

いざ競技が始まってみると、どうも順位がイマイチ奮わない。

私も”小3の次女を抱えて平均台を渡り、椅子に置いてある風船を尻で割る”と

いう何だかよくわからないキワモノ競技で1位になったり、それなりにチームに

貢献してるつもりだったが、やはりV9の威光が消えたのは、他の地域にとって

心理的に有利に影響してるのか、ご近所さんたちの頑張りも虚しく、順位的には

優勝争いの集団からちょっと離れた2番手グループといったポジションだった。


前半戦の半ばに「マラソン」という種目が行われる。

小学校を出発し、あらかじめ決められている数キロのコースを走ってくるのだ。

年齢性別の制限も参加の強制もなしだが完走しただけで、まず1人1ポイント

もらえて、さらに到着の上位にはそれ相応のポイントが加算される仕組みに

なっていて、息子も友達と一緒に大人に混じってスタートした。


さて、運動会の花形と言えば「綱引き」と最後の「リレー」だろう。

この2競技は午前中にまず、予選を行い20チームから決勝に進む8チームを

選出しておくのだが、イロドリ町は足の速い人が多くて、リレーは楽勝で予選を

通過し、今度は綱引きの予選へ。

たまたまウチのチームの試合中に実行委員からのアナウンスが流れる。

「ただいま、マラソン参加中のトップの選手がグラウンドに戻ってまいりました!

皆様、あたたかい拍手でお迎えください!」

両チーム、綱引きの綱を一旦下ろし、戻ってくる選手を拍手で称える。

トップで帰ってきた選手は、どこの地域の人か知らなかったが、見るからに走り

慣れてる感じの人で、フォームもキレイで息も全くアガってなかった。

「おおーーーーーーーー!!」

しばらくして歓声が一際大きくなった。

2位の選手に続いて戻ってきたのは小学校の体操服を着た男子だった。

町の名前を書いた胸のゼッケンが捲れて何処の子かわからない・・・いや、

私にはすぐわかった。

息子だ。

学校の外からグラウンドに戻ってきて、大きな歓声と拍手に迎えられながら

ゴールを目指すその姿は、さながら「走れメロス」のようであった。

大人もたくさん参加してる中での全体での3位は快挙である。

もちろん小学生の中ではブッちぎりの優勝だ。

”そこそこ足が速い”という理由で運動会では常に「走り系」の競技にエントリー

される息子だが、ここまで見事な成績を残すのは初めてではなかろうか。

やがて一緒にスタートした友達や、その他の参加選手も続々と帰ってきて

中断していた綱引きの競技が再開されたのだが、私の前で綱を握っていた、

この年の町内会長が驚いた様子で私に言った。

「アンタんトコの息子、凄いなあ」

私も鼻高々だったが、ここで私が天狗になる必要もなかったので

「いやいや、ここの町内の子もみんな完走して立派ですよ~」

と、謙遜し、ヨイショしておいた。

この、息子の快挙は個人的な喜びだけでなく、我がイロドリ町チームに

とっても予想を遥かに上回る効果を生んだ。

全体の3位に加えて、小学生の部での優勝というボーナスが加わって、

ありえないくらいのポイントが加算され、我がチームは一躍優勝争いの

一角へと躍り出たのだった。

「しかし、マラソン様さまだな」と、町内会長。

「まさにウチにとっては”ドル箱競技”ですなあ」と、イロドリ。

「クククククク・・・」

「フフフフフフ・・」

と、まるで悪代官と越後屋のような会話を町内会長と交わしながら

綱引きの予選も無事に突破し、昼食の時間を挟んで、運動会は

大混戦の後半・午後の部へと向かうのでありました。



(お詫び)

前回の前編で「次回、後編につづく」とかいておきながら、やっぱり

今回も前・後編の2回では収まりきれず、3回になってしまいました。

ゴメンチャイ [たらーっ(汗)]

と、いうわけで1回延びただけの価値はある(はず)、感動必至の

次回、後編をご期待ください~!ホント、サーセン [あせあせ(飛び散る汗)]











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