SSブログ

26年目の復讐(後編) [26年目の復讐]

まあ、そんなこんなで26年も経ってオークションという意外な形で、当時欲しかった

「オネアミスの翼」のセル画を手に入れることが出来、長年の悔しかった思いが

ようやく昇華されたということと、譲っていただいたセル画がどのシーンに使われていた

のかを確認するために、レンタルでDVDを借りてきて、実に4半世紀ぶりにこの作品との

対面とあいなったのであった。


「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間に落第軍隊として見下されている

オネアミス王立宇宙軍。宇宙軍士官・シロツグラーダットは、欲望の場所でしかない

歓楽街で献身的に布教活動を行う少女・リイクニノンデライコとの出会いをきっかけに

それまでのその日暮しの自堕落な生活を捨て、宇宙戦艦という名目の人類初の

有人人工衛星打ち上げ計画に参加し宇宙を目指すことになる。

(wikipediaより抜粋)


前回の中編でもちょっと触れたが、公開初日に観て以来その後まったく観なかったのは

セル画をもらい損ねて悔しかっただけでなく(まあ、それが1番の理由なのだが)、

作品の出来自体が期待したほどではなかったというのも大きかったからだ。

まず、声に違和感があって最後まで馴染めなかった。

主人公・シロツグの声は何と森本レオさんだった。森本さんには罪はないのだが、あの

ボソボソと話す喋り方は劇場で観ても聞き取りにくかったし、どう考えても21歳の設定

のシロツグのイメージに合わなかった。

映画はシロツグの独白から始まるのだが、今回久しぶりに観ても機関車トーマスの

ナレーションにしか聞こえず、今にも画面の向こうから陽気な青色の人面機関車が

走ってきそうな錯覚に襲われた。

それと最大の難点はシロツグの「リイクニ強姦未遂」のシーンである。

リイクニとの出会いによって自堕落な生活から抜け出し、人類初の宇宙飛行士へと

なるべく成長してゆく過程で、それまで見えなかった現実を知り、焦りやら苛立ちの

捌け口を、リイクニに求めたのだろうこのシーン、先に小説版を読んでてこういう場面

があるのは知っていたが映像ではやめてほしかった。

結果的に、リイクニの抵抗によって未遂に終わるのだが、子供が見て宇宙飛行士に

なりたいと思うような内容のアニメに、こういう野暮な場面は絶対要らんと思う。


のちに「エヴァンゲリオン」で一世を風靡する「ガイナックス」は、この作品を制作する

ために立ち上げた制作会社だと聞いた。スタッフは殆どが当時20代の若者だった

らしく、結果としてこの映画は興行的には大赤字だったという。が、

それでもこの作品は、今でもたくさんの人たちの心の中に残っている。

きっと「いいものをつくりたい」という若い才能の、儲けを度外視した情熱が人々の

記憶に残る作品にしたのだろう。

公開後のアニメ誌の反応は概ね好評だったが、一般のファンからは私とおなじように

「期待が大きすぎて、それほど感動できなかった」という意見もチラホラ見えた。

映像は当時としては画期的だったが、そちらにちからを入れすぎて、肝心な人物の

心理描写が追いついていないという感じがした人も多かったのか。印象的な感想で

「頭のいい秀才たちが作った、どこかちょっと醒めてる映画」という意見があり、まさに

言いえて妙だなと納得した記憶がある。


一方、小説版は、どちらかというと映像重視になりがちなこの作品の荒削りな部分を

作者の「さりげない優しさに溢れた文章」で見事にカバーしていて、単なる映画の

ノベライズではなく、ひとつの青春モノの小説としても素晴しい出来だと今も思ってる。

120分という時間の中では描ききれなかった登場人物の内面や背景だけでなく、

映画の中では単なる同僚としか描かれてなかった人物が、宇宙軍唯一のエリート

としてシロツグの前にライバルとして立ちはだかったり、同じく仲間の中に何と敵国の

スパイが紛れ込んでいたり、シロツグの姿に昔の彼氏を重ねあわせて惹かれてゆく

美貌の鬼教官やら、シロツグの元カノやら・・・その他さまざまな人物が、ラストの

シロツグの乗ったロケットが宇宙へ飛び立つ様子を見守る場面は感動です。

ちなみに私が個人的に好きな場面は、シロツグが宇宙飛行士に正式に決定して、

有名人になったとき、そのニュースに勇気づけられた盲目の少女からファンレターを

受け取り、サプライズでその子の居る施設を訪れるというまるで「タイガーマスク」の

「ふく面ワールドリーグ戦(原文ママ)」のようなシーン、もうひとつは物語のラスト

近く、いよいよロケット打ち上げのため現地に向かうヘリコプターの中で自分と

同じくらいの年齢の副操縦士にサインをして欲しいと頼まれる場面。


「シロツグは男の告げた名前の前に”親愛なる”とつけ加え、そして自分の名前を

書いた。」


まあ、何の変哲も無い普通の文章なんですけど、成功するかどうかわからない

ロケット発射に向けて、心を落ち着かせようとしてる中でのシロツグのこの優しさ、

小説版は終始こういうさりげな描写に溢れているのです。

(これを優しさととるかどうかは個人の価値観ですけどね)


長々とくだらない感想を書いてしまいましたが、26年ぶりにこの映画を観てみて、

やっぱりいろんな意味で「日本アニメ史」に残る名作には違いないと思いました。

おそらくこの先、こういった作品はもう出てこないでしょうね。


ちなみに譲っていただいたセル画は、リイクニが引き取って育ててる少女マナが

「お星様」と言う前半の場面のもので人見知りで劇中たった2回しかセリフがない

マナの貴重な一回めのセリフのシーンのものでした。

出品者さま、本当にありがとうございました。

P1010595.JPG

今まで読んだ中で人生ベスト3に入る小説版「オネアミスの翼(上・下)」


P1010596.JPG

なんと消費税導入前の金額!時代を感じさせますなあ・・・











nice!(9)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 9

コメント 1

クローヴ

「オネアミスの翼」のセル画を手に入れられることが出来て良かったですね!
私は全く内容を知らないのですが、弟がこのビデオを持っていたような気がします。
わ〜歳がバレるって(笑)
by クローヴ (2013-04-11 22:32) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

26年目の復讐(中編)吉報 来たれり ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。