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特別編「ニャアコの出産前夜・後編その1」 [出産]

その日の朝は、特に寒かった。

ニャアコがちゃんと箱に入って出産しようとしてる姿に感動したが、よほど寒かったのか可哀想に鼻水が
出ていた。

ん~ん~と、いきんでいるようにも見えたが産まれてきそうな気配がなかった。
そうこうしてるうちに出勤時間がきてしまった、何とか見守ってやりたかったが
「無事に産まれたら連絡してくれ」と、妻に言い残し泣く泣く出勤した。

いつ連絡が来るかと気が気でなかったが、妻が出勤するまで間に合わなかったのか午前中には連絡は来ず
外には雪が降り始めていた。まずい。家の中は相当寒いぞ。

午後12時になり昼休憩と同時に家に飛んで帰った。どうか無事に産まれて風邪ひいてませんように。
祈るような気持ちで家の戸をガラガラと開けた。

「ニャアコー帰ったぞー!」

靴を脱ぎながら耳をすましたが、子猫の鳴き声らしきものは聞こえなかった。

・・・まさか・・・

と思った時、目の前の廊下をニャアコが悠々と横切っていった。

「あら?ニャアコ、子供は?」

部屋に入って恐る恐る箱の中を覗いて見たが空っぽだった。
あらためてニャアコを見てみると、腹がデカいままだ。

どうも状況から察するに結局まだ産まれてないという事らしい、朝のあの産気づいた姿は何だったのか・・・

残念なような、どこかホっとしたような複雑な気持ちで、持って帰ってきた弁当を我が家で食べた。
これからまた職場に帰って夜まで仕事するのかと思うと、どっと疲れが出たが、当のニャアコは人の気も
知らず呑気に寝そべっていた。



外の雪はどんどん積もっていっていた。


(もうちょっとつづく)

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